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「水と土壌、食料と環境」

 貿易の自由化に関連して、いつも頭から離れない問題がある。食料の自給率である。現状でも日本の自給率は、カロリー計算で4割そこそこなのに、関税が撤廃されて外国から肉や野菜、果樹や魚が大量に輸入されるとどうなるか。

 ▼まず、農林水産業が打撃を受ける。和歌山県の推計では、ミカン農家の収入は3割減になるという。地域は衰退し、耕作放棄地が増える。自然環境にも悪影響が及ぶ。この国の文化を育て、豊かな精神性を育んできた土台が揺らぐ。輸入が止まれば、国としての存立が危うくなる。

 ▼そんなことを考えているときに『18cmの奇跡』(三五館)を読んだ。著者はみなみかつゆきさん。農業大学校の校長であり、人間が手を加えていない「土」と、植物栽培のために手を加えた「壌」とを研究してきた人である。

 ▼そこには、こんなことが書かれている。1センチの土が育つのに千年の歳月がかかる。人類が生きるために使える土壌は陸地表面で平均すると18センチしかない。東京都の大地は8割以上がアスファルトなどで覆われている。土壌の呼吸が乱れると、大気や水、オゾン層に悪影響を及ぼす……。

 ▼食料を輸入するのは、他国の水と土壌養分を輸入するのと同じこと。養分が過剰になると、土壌を劣化させ、河川の富栄養化を促し、地下水の汚染が生じるとも警告している。

 ▼目先の損得だけでなく、貿易の自由化問題は、こうした視点からも考える必要がある。 (石)



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