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「庶民の道、祈りの道」

 先日、田辺市の鮎川から中辺路町北郡に抜け、清姫の墓に至る熊野古道を往復した。距離は約8キロ、ゆっくり歩いて3時間。今回、世界遺産に追加登録された北郡越である。

 ▼出発地は鮎川の住吉神社。社殿に手を合わせ、裏山のオガタマの巨木を訪ねる。高さ27メートル、幹回り4メートル。社殿を見下ろすようにそびえる姿は、聞きしに勝る威厳がある。境内にはムクロジやスギの大木もあり、巨樹ファンには夢のような森である。

 ▼そこから集落を結ぶ舗装路を30分ほど歩くと、右手の高台が平安末期、後白河法皇の仮御所があったといわれる御所平。隣接してお薬師さんがあり、ほこらの周囲には穴の開いた小石が積み重ねられている。耳の不自由な人が耳が聞こえるようにと願を掛け、納めた石である。

 ▼能越橋との分岐点に建立された藤原定家の歌碑を眺め、富田川の清流を左手に見ながら進んでいくと、道端に庚申塚と子宝を願う人たちが信仰したという道祖神が並んでいる。奇抜な形の石像に手を合わせている人々の姿を想像すると、願いの切実さが伝わってくる。

 ▼ここは熊野参詣道であり、土地の人にとっては信仰の場でもあったのだろう。それが文化遺産として高く評価された。

 ▼人が歩けば道ができる。けれども、それを支える歴史と文化に光が当たることは珍しい。そこに注目し、この道を維持してきた人々の願いに思いをはせてみよう。新たな道の魅力が見つかるに違いない。(石)



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