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「歴史の教訓」

 NHKの大河ドラマ『真田丸』が最終段階に入ってきた。主人公の真田信繁が豊臣方に義を感じ、謀略と力攻めの徳川方に果敢に挑戦して滅びる。その後、覇権が関東に移るだけに、関西人には哀切の感ひとしおだ。

 ▼歴史学者の加藤陽子東大教授は著書『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』で、この大坂の陣が太平洋戦争の口実に使われた事実を明らかにする。開戦3カ月前の御前会議で、永野修身軍令部総長が昭和天皇らに対し「対米攻撃を引き延ばせばじり貧になる。大坂冬の陣のごとく、一時の平和を得ても次には滅びる」と説明して開戦の同意を得る。

 ▼真珠湾攻撃の裁可を得たときにも、山本五十六提督は織田信長の桶狭間奇襲を引いて天皇に説明した。「大坂冬の陣も桶狭間も、天皇が史実を用いた講談調の説得には弱いとみた海軍側の知恵だったのか」と加藤教授はいう。

 ▼こんな話は内外の歴史上無数にある。泥沼になっている中東情勢もその一例だ。ブッシュ米元大統領は戦前と戦後の日本を念頭に、イラクを軍事的にたたいても、戦後は民主化して再生すると判断した。だが結果的には大誤算になり、中東はテロや内戦がいまだにやむ気配がない。

 ▼英国の歴史家、E・H・カーは「歴史は現在と過去の対話だ」という。対話が成り立つためには厳密な客観性が不可欠だ。結論が先にあり、自分の都合に合わせて歴史を口実に使えば、国を滅ぼすことになる。 (倫)



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