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「師走の情景」

 ここ数日、自転車か徒歩で職場に出ている。歩けば片道40分、自転車なら10分余りの距離だが、普段の車から見る景色とはまるで違った光景が広がっている。

 ▼車の場合は前方を注視し、流れに乗った運転が必要だが、自転車は違う。小回りが利くから何かと便利だ。サイクリング気分で遠回りして郊外を走れば、山裾でイチョウの葉が黄色に色づき、民家の軒先ではサザンカが咲き、散っているのが見える。

 ▼徒歩なら道沿いの田畑で草花や樹木に出合える。立ち止まってじっくり眺めるのも自在である。庭先でナンテンの実が赤くなり、咲き残りのコスモスが揺れている。畑ではキャベツが勢いよく葉を伸ばし、固く締まった球を抱えている。

 ▼ほんの少し時間の流れを遅くし、視点を変えるだけで、世界が違って見える。それは景色だけのことではあるまい。相手の側に身を置いて考えれば、思いもよらない発想が生まれるし、腰をかがめて子どもと向き合えば、相手の求めているものがよく分かる。

 ▼しかし昨今の政界には、そうしたゆとりはないようだ。国会の審議などでも、自分の主張を一方的に押し付ける人や聞きたいことしか耳に入れない人が幅を利かせている。イエスかノーかの判断を迫るばかりで、第三の道を探る能力は軽んじられる。質疑の途中、時間が余ったと般若心経を唱えた与党の議員もいる。

 ▼それが2016年師走、政界の情景である。寂しい話ではないか。(石)



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