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「75歳」

 昨年末、退職される同僚から丁寧なあいさつを受けた。60歳で定年、その後5年間の再雇用期間も終わって、一つのゴールにたどり着いた満足感と少しの寂しさが交じった表情だった。「しばらく英気を養います」という言葉にも、健康で節目を迎えられたことに、ほっとした気持ちが表れていた。

 ▼世間ではいま、多くの人が60歳、あるいは65歳で現役を退き、次の人生に進む準備を始める。林住期という呼び方があるように、やがて来るあの世への旅立ちに備えて、来し方行く末を考える区切りの年代でもある。

 ▼ところが、日本老年学会と日本老年医学会は「高齢者とは75歳以上。65歳から74歳は元気な人が多く、高齢者とするには時代に合わない。准高齢者として、社会の支え手と捉え直すように」と求める提言を発表した。医療の進歩や生活環境の改善により、身体の働きや知的能力が若返っている。70歳前後の人たちが活躍することで明るく活力ある高齢化社会につながる。そういうのである。

 ▼提言は「医学的なもの」というが、これを機に、従来は「支えられる者」と位置付けてきた65歳以上の人たちを「支える者」にしようという議論が加速しそうだ。「もっと働け、医療や介護保険の厚遇もやめよう」といわれているような気がする。

 ▼学会が定義を変えるのは勝手だが、行政がそれをそのまま甘受してよいことではなかろう。この点は譲らず、熟考が必要な問題である。(石)



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