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「雨の世界遺産・長尾坂」

 田辺市内の熊野古道「長尾坂」を初めて取材したのは30年ほど前。文化庁の歴史の道保存整備事業で道が復元されることになり、事前に写真を撮った。当時は雑草が生い茂り、歩けるような状態ではなかったが、わずかに残る石畳は美しかった。

 ▼整備事業は1986年度から4年間にわたって行われ、長尾坂や捻木の杉周辺の古道265メートルが復元された。その頃、長尾坂やそれに続く潮見峠越が世界遺産に登録されるとは夢にも思わなかった。

 ▼潮見峠越の古道は、熊野三山への近道として室町時代から利用されるようになった。距離は短いがその分険しい。終点の田辺市中辺路町小皆までのおよそ10キロ、標高差500メートルのコースは健脚向けだ。

 ▼先日久しぶりに歩く機会があった。あいにく小雨に降られたが、それがかえって古道に趣を添えていた。補修直後はしっくりしなかった石畳も30年の歳月を経てこけむし、歴史の道にすっかり溶け込んでいた。

 ▼安珍を追い掛ける清姫が蛇に化身して巻き付いたという捻木の杉も、しっとりぬれてなまめかしかった。雨上がりには、清姫が見たかもしれない田辺の街並みや田辺湾、遠く白浜の温泉街もよく見えた。その眺望もこのコースの魅力である。

 ▼一度は歩いてほしいこの古道も、交通手段に課題がある。長尾坂への路線バスは週3日の運行で、週末は利用できない。世界遺産の登録を機に、古道ファンを受け入れる仕組みを整えたい。 (長)



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