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「保全してこそ宝物」

 紀南の写真愛好家の作品に感動させられることが多い。本紙に連載されている「四季彩々」の写真もその一つである。撮影者の感覚に加えて、被写体となる豊かな自然、優れた景観がこの地に多いことも影響しているのだろう。

 ▼連載中の「地質遺産の物語」にも、そうした素晴らしい被写体が幾つも登場している。世界遺産に認定された熊野古道、熊野川や北山川のダイナミックな景観、橋杭岩や円月島、三段壁など自然がつくり出した造形美、各地の温泉……。数え上げればきりがない。

 ▼プロ、アマ問わず、作品にはそれぞれ地域の物語や先人の記憶までが写し込まれている。古道沿いの石仏、神を祭った跡、畑や水田跡のスギの植林、山あいの船着き場。多くの観光客が訪れる観光名所はもちろん、ほとんど無名の場所であっても、そこに住んだ人、訪れた人の痕跡や歴史は必ず残されている。写真を撮り、地質遺産をたどる作業は、こうした歴史を知り、地域の宝物を問い直す作業でもある。

 ▼一方で、失った観光資源が多いことにも気付かされる。白浜町の白良浜はいまも、観光客に人気の場所だが「サンドスキーを楽しんでいた昭和初期までの自然が残っていたら」と惜しむ声がある。「田辺の三壺崎から文里に至る海岸には奇岩が点在し、風光明媚(めいび)な所だった」と懐かしむ人もいる。

 ▼そういう声を聞くたびに、残された宝物を大切にしなければと、強く思う。(沖)


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