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「様変わりした妊娠、出産」

 昔は妊娠、出産の図式は単純だった。父母がいて子どもが生まれる。子宝に恵まれないと養子をとる、という構図だったが、科学の発達がこれを大きく変えた。

 ▼きっかけは約40年前の英国。正常妊娠が不可能な妻の卵子を採取、夫の精子と試験管内で受精させ、子宮に戻して正常出産させた。

 ▼当時、ロンドン駐在だった私は「試験管ベビーの誕生」を大きく報じた。カトリックの総本山バチカンは「神の意思に反する根源的な悪」と強く反対した。当時小学生だった私の娘が成人後この恩恵を受け、双子の母親になろうとは夢想もしなかった。孫たちも今は中学生だ。

 ▼この技術の応用で、米国では妻以外の卵子、夫以外の精子の提供にも道を開いた。さらに、体外受精児を第三者の代理母に移植して出産してもらう「借り腹」が普通になった。

 ▼この場合、子どもの法律上の親は依頼者夫婦とされるが、仮の親と依頼者の権利を巡ってさまざまな紛争も生まれた。謝礼金の受け取りを拒否した代理母が、子どもの返還を求めた訴訟もあった。第三者の精子、卵子の提供を受けた場合、子どもが生物学上の親を知る権利はどうするかなど難問も多い。男同士、女同士の結婚も認める動きの中で、子どもを欲した場合、事情はさらに複雑だ。

 ▼国内でも最近、匿名の第三者から卵子の提供を受けた初の出産があった。妊娠、出産の多様化に遅れている日本は、多様な法整備もこれからだ。 (倫)



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