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「雨の名前」

 「花人を鎮めの風雨至りけり」(泊雲)。桜の盛りに雨と風。夜来の風雨で、咲きそろった花が散ってしまった。

 ▼4月は本当に雨の日が多い。しかし、作物にとっては恵みの雨。二十四節気の一つ「穀雨」という呼び名にも、穀物の生育を促す春の雨を歓迎する気持ちが込められている。

 ▼穀雨だけではない。この季節の雨には、生活に密着した多彩な名前が付いている。草木を潤す甘雨。春霖といえば、春の長雨。長く降り続いて花が腐ってしまうという意味を持つ卯の花腐し(うのはなくたし)。菜種梅雨という言葉も、最近は天気予報などで広く知られるようになってきた。

 ▼こうした言葉を辞書や歳時記で見掛けるたびに思うことがある。北から南に長い日本列島に住む人たちの多彩で繊細な季節感であり、それを表す言葉の豊かさである。雨の強弱から始まり、それが暮らしに及ぼす影響までを的確に表す言葉の数々に感嘆する。

 ▼農業や漁業に従事する人々は夕方の空を見上げて風の向きを確かめ、翌日の天気を予測して作業の段取りをつける。「観天望気」と呼ばれるこうした習慣も、不順な天気と折り合いを付けようとする暮らしの知恵から生まれた。人間は雨も風も制御できない。ならば味方にしようというたくましさであり、その表れがいま、私たちが目にする豊潤な雨の名前である。

 ▼そう考えると、その一つ一つの名前を一つでも多く、頭に刻み込んでおきたくなる。 (石)



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