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「熊谷守一の肖像」

 田辺市立美術館で開催中の「熊谷守一―書と絵と肖像」展を観覧した。展示は書、水墨画、油絵と多彩で見応えがあった。熊谷の妻秀子さんはみなべ町の出身であり、当地とも縁がある。

 ▼作品と合わせて写真家、藤森武さんが撮影した最晩年の肖像20点が展示されている。写真嫌いだった熊谷の家に3カ月通って撮影の許しを得、94歳から97歳までの3年間に3千枚以上を撮影した。

 ▼白いひげをたくわえた熊谷は二枚目俳優のように端正な顔つきで、目元に優しさをたたえている。藤森さんは記念講演で「熊谷先生の顔にほれ、人間性にほれてとりこになった」と、撮影にまつわるエピソードを話してくれた。

 ▼熊野古道なかへち美術館で開催中の「脇村義太郎のコレクション」展には、親交があった画家、有島生馬が描いた熊谷の肖像画が出品されている。1930年の作品で、熊谷は50歳。日本人離れした風貌で右手にパイプを持ってたたずんでいる。その目はどこか遠くを見ているようだった。

 ▼田辺市立美術館には、藤森さんの師匠である写真家、土門拳が撮影した熊谷の写真も展示されている。庭に寝転ぶ熊谷は68歳。「写真の鬼」といわれた土門のカメラがとらえた表情はやや厳しく、画家が内に秘めた強い意志のようなものが伝わってくる。

 ▼優れた肖像写真は人物の内面を描き出し、同時に作者のまなざしも映すと感じた。展覧会の会期は両美術館とも7月2日まで。 (長)



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