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「新茶の香り」

 奈良市の北郊でお茶を生産している友人から新茶が到来した。八十八夜に摘んだばかりの「なまもの」だという。

 ▼密閉された小さな缶には、淡い緑色の葉がぎっしり詰まっている。新茶独特の香りが広がり、まるで新茶を摘んでいるような気になる。聞けば一般のお茶のように、蒸すことも熱を加えることもせず、あえて自然のままの茶葉で最高のぜいたくを満喫できるようにしたそうだ。

 ▼彼は大阪でも知られたお茶の店の当主だったが、20年ほど前、農薬も化学肥料も使わずに納得できる味のお茶をつくりたいと、雑木林を切り開いて約6600平方メートルの畑を開墾、茶畑の経営に乗り出した。

 ▼それからの努力が半端でない。炭に土壌を改良し、水を浄化する機能があると知ると、南部川産の備長炭約40トンを取り寄せ、10年がかりで畝に埋め込んだ。遅霜から新芽を守るためには、太陽の熱を畑に蓄えるのが肝心と考え、茶畑に立派な石垣を巡らせた。

 ▼10年ほど前、遅霜に見舞われて新芽が枯れたことがあったが、強く育った木は即座に新たな芽をつけ、致命的な被害にはならなかったという。炭で浄化した水と石垣から取り込んだ熱が茶畑を守ってくれた、と話してくれた時の喜びの声が忘れられない。

 ▼彼はこの茶葉を「天と地からの賜り物」と表現する。それが「天の神様、地の神様、風の神様、雨の神様…」と、いくつもの名を上げて手を合わせている農家の人の姿に重なった。 (石)



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