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「佐山さんと野球」

 田辺市在住のノンフィクション作家、佐山和夫氏は年来の友人だ。父上は旧制田辺中学時代の英語の恩師で、エンペラーというあだ名で知られていた。佐山氏は米国野球研究の第一人者だが、私自身も米国との関わりが深い。

 ▼その佐山氏から近著『史上最高の投手はだれか 完全版』(潮文庫)を送っていただいた。35年前に潮賞を受賞された同じタイトルの著書に加筆し、文庫で発行された。

 ▼佐山氏は先に、元巨人軍の桑田真澄投手と対談した本を出版している。その桑田氏が「自分のピッチング理論を裏付けてくれた偉大な投手」とたたえた黒人投手リーロイ・ペイジが主人公だ。

 ▼ペイジが全盛時代を送った1930年〜40年代に、黒人は大リーグから完全に締め出されていた。だが記録や証言で見る限り、黒人リーグのペイジは、大リーガーを上回る史上最高の投手だったらしい。佐山氏はペイジの死後、全米各地に証人を訪ね、記録を洗い出し、ペイジの華麗な生涯を再現した。

 ▼黒人の解放運動が盛り上がった60年代に渦中の南部を訪ねた私は、各地で流血の惨事を目撃した。米国人がかかっていた人種差別という病が、いかに重篤なものだったかを肌身で知ったのだ。だから佐山氏の情熱と問題意識を高く買うのである。

 ▼折から甲子園球場では夏の高校野球が真っ盛り。プロ野球も佳境に入っている。世界的視野で描かれた佐山氏の名著を堪能する好機である。(倫)


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