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「農家の心」

 こんなにうまい果物があるのか、と感嘆したことが2度ある。一つは50年前、新聞記者となって初めての任地である長野県上田市郊外の果樹農家で頂いた大粒のブドウ。当時、栽培が始まったばかりの巨峰という品種で、粒が大きく甘みもたっぷり。ほっぺたが落ちるほどうまかった。

 ▼それから間もなく、今度は同じ農家で木のてっぺんで完熟したリンゴを頂いた。スターキングという品種で、さっぱりした甘さが特徴。高いはしごを立てないと収穫できないため、忙しい時には放置し、完熟させる。それを手の空いたときに自家用に収穫しているという。見た目はよくないが、蜜はたっぷりだった。

 ▼この人は、地元では知られた篤農家。取材が縁で知り合ったが、リンゴやブドウの栽培に関する話は奥が深く、いつ聞いても新鮮な驚きがあった。何よりも、もっとうまい果実を作ろうとする努力と丹精ぶりに心が揺さぶられた。

 ▼それから半世紀。田辺で懇意にしてもらっているミカン農家の人たちにも、同様の気質がある。顔も言葉遣いも異なるが、自分が育てている作物に対する畏敬の気持ち、それをもたらせてくれるお日さまや土、風や雨への感謝の気持ち。そういう心の在り方に共通する何かを感じるのだ。

 ▼モノを育てる仕事に近道はない。けれども、うまずたゆまず、向上心を持って取り組めば、それにふさわしい実りがついてくる。教育やまちづくりも同様だろう。 (石)



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