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「朝霧のシーズン」

 和歌山県田辺市中辺路町高原は、世界遺産に登録されている熊野古道の中でも好きな場所の一つだ。秋から冬にかけては朝霧が立つ日が多く、「霧の里」ともいわれる。この秋も霧のシーズンが始まった。

 ▼湿気が多い日の翌朝、富田川が流れる谷間から湧き立つ。他の場所にはなくても、高原だけは霧に包まれるから地形が関係しているのだろう。霧が出そうな日の朝、目星を付けて足を運んだところ、運良く見事な朝霧を見ることができた。

 ▼時間は午前6時半ごろ。雲のように固まった霧が、右から左へとゆったりと流れる。霧の濃淡に合わせて、眼下に見える景色が刻々と変化する。背後の山から朝日が降り注ぐと、どんよりしていた霧は白く輝き、徐々に薄れていく。

 ▼その中に浮かび上がってくるのは高原熊野神社の森。室町時代の創建で、社殿は熊野古道沿いに残る神社建築の中で最も古い。クスノキの巨樹は明治政府の神社合祀(ごうし)令で伐採されそうになったが、博物学者・南方熊楠の神社合祀反対運動が実って難を逃れた。

 ▼高原の魅力は春夏秋冬、四季折々に変化する棚田の景観だが、週末に休憩所で販売される草餅を味わうのも楽しみの一つ。大きめの餅はヨモギの香りがよく、あんは甘すぎずに食べやすい。餅と並べられた大粒のクリにもつい手が出る。

 ▼この時季、霧を背景にしたコスモスやススキの群落は風情たっぷり。しかし「だんご」も捨てがたい。 (長)



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