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「美術のあるまち」

 毎年、この季節には田辺市展の鑑賞が楽しみだ。日曜日も雨の中、いそいそと会場の紀南文化会館に出掛けた。

 ▼第1期の絵画や写真などは前週に終わり、今週は第2期の書、彫塑、生花の部。それぞれに、思わず足が止まってしまう魅力的な作品がいくつも展示されていた。

 ▼とりわけ彫塑の部で知事賞に輝いた「ESCAPE―1.」が印象深かった。廃虚となったビルをモチーフにした作品で、作者は南部高校、湯川佳応理さん。屋上からは空に向かう小さなはしごが立っており、それが夢に向かう階段のように思えた。市長賞の「二つの四角柱」は熊野高校、芝田源治さんの作品。これもまた、その前を離れ難かった。

 ▼これは彫塑に限らない。別の部屋の書でも、第1期の絵画の部や写真の部でも、神島高校や南部高校の生徒らが才能のきらめきを感じさせる作品をいくつも出品。この展覧会がこの地域の高校生の登竜門、あるいはひのき舞台という印象を受けた。

 ▼田辺市展は今年が64回目。その間、作品の指導をしたり、審査をしたり、展示作業に関わってきた人たちの努力と、ここが勝負の舞台と思い定めて、制作を続けた出品者の努力でこの歴史が続いている。

 ▼それはまた絵を描き、書に没頭し、花を生けて楽しむ人たちの底辺が広いということでもあろう。地方都市には珍しい二つの美術館とともに、芸術が暮らしに浸透しているのだ。まちの底力といってもよい。 (石)



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