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「貴婦人に魅せられ」

 すさみ町太間川でキイジョウロウホトトギスを育てている堀野光男さん(84)の園地を訪ねた。高齢のため、一般開放するのは今年が最後だという。石垣から垂れる約6500株の花は見事であり、あれほどの群落は初めて見た。

 ▼この花は紀伊半島固有の植物。その優雅な姿から上臈(貴婦人)の名が付けられたという。ところが美しさがあだになり、手の届く範囲にある自生の株は取り尽くされた。湿気のある場所を好むなど生育条件が限られ、成長も遅いことから群落の再生は難しい。

 ▼けれども、この花に魅せられて栽培に取り組んでいる人が各地にいる。先駆けになったのは、すさみ町佐本地域の故山中茂さん。地域内で栽培を奨励して生産組合を設立し、切り花として出荷した。御坊市にある県暖地園芸センターも苗の育成や挿し芽による増殖など栽培技術の確立に取り組んでいる。しかし安定生産は難しく、佐本地域の組合も活動を休止して愛好会に移行した。

 ▼わが家でも、30年以上前に義父が植えた花を少しずつ増やし、いまは40株ほどになった。秋に種を採集して翌年の春に岩壁や石垣にまく。ポットで苗を育てて鉢植えも作った。

 ▼それにしてもこの貴婦人は繊細で、育てるのが難しい。見事な園地をつくった堀野さんでも「これが正解という育て方は分からなかった」という。「今年限りと言わず、来年もぜひ公開を」と無理なお願いをして園地を後にした。 (長)



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