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「オリンピックの真実」

 田辺市在住のノンフィクション作家、佐山和夫さんの新著『オリンピックの真実』(潮出版)を読んだ。クーベルタン男爵がなぜ近代オリンピックを思い立ったのか、彼の理想や期待はどこにあったのかと問い掛け、丹念な取材と埋もれた資料からその真実を解明していく物語である。

 ▼驚くのは、1896年にギリシャのアテネで第1回の近代オリンピックが開かれるずっと前から、イギリス各地で定期的にオリンピックという名のイベントが開かれ、そのリーダーたちが「健全な肉体に健全な精神が宿らんことを」という理想を掲げていたことである。

 ▼「重要なことは勝つことではなく、参加すること」「より速く、より高く、より強く」といった言葉もそこから生まれ、それをクーベルタンが近代五輪の理念としたことも明らかにしている。

 ▼五輪はいま、商業主義との関わりが深くなり、当初の理念も変化しつつある。純粋なアマチュアリズムは背景に追いやられ、開催地の選定などでも強国のエゴがむき出しになった。そうした潮流に異議を唱え、いま私たちがオリンピックとどう向き合うかと問い掛けている。

 ▼先日の本欄で紹介した宇江敏勝さんは80歳、佐山さんは81歳。民俗とスポーツ。テーマは異なるが、ともに年齢を感じさせない情熱で資料を探り、証言を聞き取り、それを作品に昇華させる作業を続けている。お二人の良質な仕事に心からの敬意を表したい。 (石)


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