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「アインシュタインのメモ」

 幕末から明治維新にかけて活躍した山岡鉄舟は剣の達人であり、書も堪能だった。禅にも造詣が深く、仏教の振興に尽くしたことでも知られている。

 ▼1872(明治5)年、明治天皇の教育係となってからは、剣と禅、書道を一日も欠かさなかった。80年には額、軸合わせて1万8千余点を書き残し、その謝礼金をすべて寺院の復興資金につぎ込んだという。

 ▼こんな話を思い返したのはほかでもない。1922年、前年にノーベル物理学賞を受賞したばかりのアインシュタインが来日。帝国ホテルに滞在した折りに、メッセージを届けに来た日本人の配達人にチップ代わりに渡した手書きのメモが競売にかけられたという記事を読んだからだ。

 ▼共同通信によると、ホテルの便箋に書いたメモは2通。「静かで節度ある生活は、絶え間ない不安に襲われながら成功を追い求めるよりも、多くの喜びをもたらせてくれる」と書いた方は156万ドル(約1億7700万円)「意志あるところに道は開ける」と書いたのは24万ドル(約2700万円)で落札された。

 ▼年間、1万8千枚もの額や軸を書き、それをすべて寺の復興資金にした人も痛快だが、ホテルで走り書きしたメモが後世、高く評価された人もすごい。ノーベル賞の威力か、高い業績への敬意か。

 ▼こういうニュースは、読み手を気宇壮大にさせてくれる。わが身の安泰だけを願って右往左往する政治家諸公が小さく見える。(石)



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