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「故郷の自然を作品に」

 滋賀県の最高峰・伊吹山(標高1377メートル)は高山植物の宝庫だ。山頂付近には春から晩秋にかけて季節の花が咲き乱れ、何度訪れても飽きることがない。けれども、天候はめまぐるしく変わり、晴れていたかと思うと急に霧が出たり雨が降ったりする。

 ▼この山に引かれた芸術家の一人が田辺市出身のタペストリー作家、潮隆雄さん。先日まで田辺市立美術館で開かれた展覧会「現代の織1.」には、琵琶湖から霧が湧き立つ雄大な姿をイメージした作品を出品した。

 ▼故郷への思いも深く、紀伊半島の自然を題材に、いくつもの作品を仕上げている。「展覧会に寄せて」の一文には「中学高校時代には、大型台風が近付くと打ち上げる大波を見たさに波止場や天神崎、三段壁まで自転車で出掛けた。そのときのイメージをもとに『月下涛声』という作品ができた」と書いている。

 ▼故郷を離れてからも、帰郷のたびに車を走らせ「自然の素晴らしさ、人知を超えた力強さ、激しさ、優しさを感じて制作の題材にしてきた」という。地元で採れるミカン「仏手柑」は、その不思議な姿が『天空へのいざない』という作品になった。波や霧の激しい動きを抽象化し、織物の持つしなやかさとぬくもりを生かした作品はすっと心に入ってくる。

 ▼田辺には市立美術館や南方熊楠顕彰館などがある。白浜には南方熊楠記念館。機会を見つけてそうした施設を巡り、多彩な展示を楽しみたい。 (長)



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