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「歌は世に連れ」

 先週末、フォーク歌手、はしだのりひこさんの訃報が届いた。72歳。日本にフォークソングを定着させた主役の一人だが、近年はパーキンソン病に苦しみ、闘病生活を送っていたそうだ。

 ▼彼の名前を初めて知ったのは1967年、僕は大学4年生だった。安下宿のトランジスタラジオから流れる「おらは死んじまっただ」というとぼけた歌詞と軽快なリズム。歌っているのはザ・フォーク・クルセダーズ、曲名は「帰ってきたヨッパライ」。双方の名が記憶に刻み込まれた。

 ▼その後、グループは解散。僕も社会人となり、長野県上田市で駆け出し記者として一歩を踏み出した。そこでは、地元の若者たちが盛んにはしださんや加藤和彦さん、北山修さんらの歌を歌っていた。「風」や「花嫁」、そして「あの素晴らしい愛をもう一度」。やがて岡林信康さんの「友よ」も彼らの定番になった。

 ▼歌う場所は古ぼけた喫茶店や駅前の広場。ギターさえあれば、即席の音楽会の開かれる時代だった。歌は世に連れ、世は歌に連れ。僕のような音楽とは縁遠い人間でも、その曲名を聞くと、即座にメロディーが浮かんでくるのは、当時の名残だろう。

 ▼ところが、いまは歌手の人気が細分化、先鋭化して、世代を超えて歌える歌が定着しづらいそうだ。それだけ社会の階層分化が進んでいるのだろう。みんなが同じ歌を歌う時代も息苦しいが、一緒に歌える歌が少ないのも気に掛かる。 (石)



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