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「ぼんやりの時間」

 日照時間が日に日に短くなっている。田辺港の18日の日の出は6時57分、日没は16時53分。日陰の多い山間部を車で走っていると、夕方の4時すぎには車幅灯を点灯しなければならないほどだ。

 ▼22日は冬至。この日、北半球では1年で一番日が短い。けれども、たまった仕事を片付け、新しい年を迎える準備を進めなければならない季節であり、大人も子どもも忙しい。

 ▼そんなときこそ「一日のうち、何度か、ぼんやりした時間を持ちたい。一回三十分でもいい、三分でもいい、三十秒でもいい。ぼーっとして木々の葉が日の光を鋭く跳ね返すさまを眺めていたい」と説いた人がいる。先日、この欄で紹介した元朝日新聞論説委員で「天声人語」を13年も連続して執筆した辰濃和男さんである。

 ▼氏は2010年に出版した『ぼんやりの時間』(岩波新書)で、ミヒャエル・エンデの『モモ』や串田孫一の『無為の貴さ』、谷崎潤一郎『懶惰(らんだ)の説』などを手掛かりに「ぼんやりと心を遊ばせる時間がいかに大切で貴いか」と繰り返し語り掛ける。

 ▼もちろん勤勉、着実、丁寧、持続力といった価値は否定しない。けれども同時に、よく働くことで休む時間を得る、よく休み、よくぼんやりすることで生きる力、よりよく働く知恵やエネルギーを手にすることができる、と述べる。

 ▼歳末に限らず、人々は日々、忙しい時間を過ごしている。だからこそ耳を傾けたい考え方だ。 (石)



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