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「製造業の信頼」

 詩人、高村光太郎の父、高村光雲が『幕末維新懐古談』(岩波文庫)で、江戸初期から大いに栄えた京都の仏師が衰退した理由について、次のように語っている。

 ▼「拙速を尚(とうと)んで間に合わせをして、代金を唯一の目的とする……すなわちあまりに商品的に彫刻物を取り扱い過ぎるところの悪習ともいえましょう」。12歳で彫刻師に入門。ひたすら修業を続け、近代木彫の祖と呼ばれた名人の指摘は、そのまま現代日本のものづくりの現場にも当てはまりそうだ。

 ▼今年は日本を代表する製造業で不正が相次いだ。神戸製鋼は品質データを改ざん、日産自動車では無資格者が完成車を検査していたことが発覚した。スバルでも同様の事態が続いていた可能性がある。三菱マテリアル、東レ、東洋ゴムなどでも製造工程での不正が明るみに出ている。

 ▼さらに、先日は新幹線の台車に14センチの亀裂が入った状態でJR西日本と東海が新幹線を運行。国土交通省が新幹線では初めての重大インシデントに認定する事態になった。

 ▼戦後の日本を支えてきた「安全第一」が音を立てて崩れている。「拙速を尚び、間に合わせをして、代金を唯一の目的とする」、つまりコスト削減と生産性向上に日夜励んできた結果だろう。合理化を最優先し、熟練の技術者たちを大切にしなかったツケが回ってきたともいえよう。

 ▼目先の利益よりも、信頼を最優先に。日本の再生はそこから始まる。 (石)



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