AGARAKiiLifeみかんKiiSearch

「西郷隆盛」

 大みそかには、必ず本を読みながら年を越す。テレビの騒々しい歌番組は嫌いだし、未明から初詣に出掛けるほどの信仰心もない。一人、静かに本を読むのがしっくりくる。

 ▼今回、手に取ったのは『西郷南洲遺訓』(岩波文庫)。遺訓だけなら21ページ、編者が集めた逸話などを含めても100ページほどだが、何度読み返しても胸に響く。そこに盛り込まれた一言一句に圧倒される。

 ▼冒頭にこんな言葉がある。「廟堂に立ちて大政を為すは天道を行ふものなれば、些とも私を挟みては済まぬもの也」。つまり、国政を担当する者は、心を公平に操り正道を歩むこと。その地位を利用し、友人や知人に便宜を図るようなことは、少しでもあってはならないと戒めている。

 ▼「人を相手にせず、天を相手にせよ」という言葉もよく知られている。続く「天を相手にして、己を尽くして人をとがめず、わが誠の足らざるを尋ぬべし」の言葉と合わせると、そのまま西郷隆盛の生涯を物語っているようにも思える。

 ▼極め付きは「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は始末に困るもの也」。これは、西郷と面談して江戸城の無血開城に道を開いた幕臣、山岡鉄舟を評した言葉と伝えられているが、これもまた大事を成す人間の資質を語って余りある。

 ▼今年のNHKの大河ドラマは「西郷どん」。こうした言葉の数々がドラマをどう盛り上げるか。テレビ嫌いの僕にも多少の興味がある。 (石)



更新)