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「霧の季節」

 寒波が来襲した朝、田辺市本宮町の湯の峰温泉から熊野本宮大社に向かう途中で思いがけない光景に出合った。霧が谷間に漂い、何の変哲もない風景を一変させていたのだ。

 ▼時刻は午前9時すぎ。朝日に照らされた霧が白く輝き、刻々と姿を変える。木々の姿が墨で描いたように黒く浮き上がる。遠くの山々が青く染まっている。やがて30分ほどで霧は消えた。

 ▼熊野古道沿いの霧の名所として知られるのは田辺市中辺路町高原。しかし、他にも幻想的な朝霧の風景に出合える場所がいくつかある。

 ▼本宮町では、熊野古道・大日越の中腹にある月見ケ丘神社がその一つ。境内には樹齢数百年のヒノキが林立し、檜皮(ひわだ)を採取したばかりの赤い幹が目を引く。こけむした祠(ほこら)と霧にかすむヒノキのコントラストが美しい。

 ▼盆地になっている中辺路町近露も、この季節は霧に覆われることが多い。古道のシンボル・牛馬童子像がある箸折峠から見下ろすと、集落が雲海に漂っているように見える。日置川の流れと霧の取り合わせもいい。

 ▼こういった霧の風景を楽しめるのも、厳冬期ならではのこと。季節が巡ると、ありがたくない花粉症の出番になる。山間部ではすでに、杉林が茶色に染まり始めている。間もなく黄色い花粉を飛ばすのだろう。中国からは季節風に乗って、黄砂や有害な微小粒子状物質(PM2・5)が流れてくる。

 ▼つらい季節への備えを怠りなく。 (長)


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