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「がんの克服」

 週刊誌・アエラの先週号に「がん克服あと10年」の見出しが躍った。半世紀ほど前、がんウイルス説を根拠にアメリカのニクソン大統領が「20世紀中にがん制圧」を宣言したことがあった。

 ▼がんの克服は人類の長年の夢でありながら、実現は困難だった。一方で克服に向かってゆっくり距離を縮めつつあることも確かだろう。それが5年と言われれば色めき立つが、10年とは見通しに責任も伴わない微妙な長さだ。

 ▼50代で私は、成否が四分六の胃がんと宣告された。手術寸前に誤診と分かったが、医師自身は後年、本物のがんで落命したのは気の毒だった。

 ▼がんには手術、薬物、放射線、免疫治療などがある。最近は高精度放射線治療の成果が著しいという。それでも死因の第1位で、年間約35万人が落命する。

 ▼がんには、患者の数だけ物語がある。作家の高橋三千綱氏は肝臓がんで余命わずかとの宣告を受けながら、開き直って体験記を書きまくる。医者のいうことなどまず聞かないから、読者には痛快だ。ところが、最近の手記ではインチキ療法に引っかかり、奥さんの蓄えた500万円までパーにしたという。あの歯切れの良さは、いったい何だったのか。

 ▼作家・米原万里さんの最後も痛ましかった。いろんな療法に迷い、原則放置を唱える某有名医師の意見も入れて、自宅で苦しみながら亡くなった。「何が最適療法かは神のみぞ知る」という点が実に悩ましい。 (倫)



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