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「後藤田さんの危惧」

 後藤田正晴さんは警察庁の長官から政界に転じ、中曽根内閣の官房長官を3度務め、宮沢内閣では副総理として活躍された。「カミソリ後藤田」とも称された。

 ▼2005年9月、91歳で亡くなられたが、その直前に書き残されたメッセージがある。こんな内容である。

 ▼「私の心配は第一に、行き当たりばったりの国家でいいのか、ということです。中長期的な国の姿を描き、それへ向けて戦略を立てる。それがない。その典型は外交です。いまだに先の戦争の教訓が生かされていない」「第二に、おかしいよ、ちょっと待て、という政治家がいなくなった。世の中、すべてが付和雷同型になっていないか(中略)おかしいことをおかしいと言わなくなったら、その国は危ないのです」。

 ▼かつて僕が働いていた信濃毎日新聞の先輩によると、これは亡くなられる1カ月ほど前、長野県で開かれた「信州岩波講座」に招かれた際に寄せられた講演要旨である。直前に体調を崩して入院されたため、対談相手である同社の当時の主筆に託されていた。

 ▼読んだ瞬間、まさに現代の政治状況ではないか、事態はさらに悪化しているのではと思った。市民から見れば、政界にはおかしいことがいっぱいあるのに、与党は付和雷同、野党はバラバラ。官僚は政権にすり寄り、おかしいことをおかしいと言わない報道機関も少なくない。

 ▼後藤田さんの危惧が目の前にあるような気がしてならない。 (石)


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