AGARAKiiLifeみかんKiiSearch

「在校生のいない卒業式」

 長く新聞記者をしていると、時にはびっくりするようなことに遭遇する。1日に南部高校が行った在校生不在の卒業式もその一つだ。

 ▼当日は県内の公立高校が一斉に卒業式を予定していたが、未明から風が強まり、田辺市以南に暴風警報が発令された。そのため、多くの高校が式の開会をずらして午後から開催したり、翌日に延期したりした。

 ▼そんな中で、南部高校は約30分遅れで式を挙行した。ただし、参加したのは卒業生と教職員、それに送辞を担当する2年生1人。在校生は不在だった。学校側の説明では、高校生が利用する電車が運転を見合わせており、在校生にまで参加を強制できなかったこと、保護者の仕事の都合もあることなどから、在校生不在のまま式を実施したそうだ。

 ▼それにしても、卒業生だけの卒業式というのは寂しい。当日の本紙に掲載された卒業式会場の写真には、卒業生を取り巻くように座る人のいない大量のいすが並んでいたが、それが式の寂しさを物語っているようだった。

 ▼在校生は先輩の卒業と前途を祝福し、卒業生は後輩に、後は頼んだぞと引き継ぐ。部活も含め、それが学校の伝統を引き継ぎ、自分たちの足跡を刻んでいくための大切な儀式ではないか。母校という言葉が意味を持ってくるのも、それゆえだろう。

 ▼たとえ数時間、開会の時間を遅らせてでも、全員が参加し、拍手の中で送ってあげたかったと思うのは僕だけだろうか。 (石)


更新)