AGARAKiiLifeみかんKiiSearch

「座敷牢」

 幕末、江戸城の無血開城に道を開いた勝海舟の父、小吉は若い頃、自宅のおりに閉じこめられたことがある。その間の事情を後年、小吉が生涯を振り返った「夢粋独言」に、次のように書いている。

 ▼ある日、実家の父親から呼び出されて「お主はたびたび不埒(ふらち)があるから、当分は逼塞(ひっそく)して身の思案をしろ」といわれた。家に帰ると「座敷へ3畳のおりがこしらえてあり。おれをぶち込んだ」「考えたところ、みんなおれが悪いからおきたことだと気がついたから、中で手習いを始めた。軍書も毎日見た。21の秋から24の冬までおりの中へ入っていたが、苦しかった」。

 ▼兵庫県三田市で、73歳の父親が精神を病んだ42歳の息子を自宅のおりに閉じこめていた監禁の疑いで逮捕された。「精神疾患の息子が暴れるから」と容疑を認めており「16歳ごろからおりに入れて生活させていた」という。

 ▼小吉の時代とは異なり、周囲の目を気にしながらの監禁である。監禁された方もした方も、苦しみ続けたに違いない。精神科の治療を受けるとかカウンセラーに相談するとかの対策が取れなかったのかとも思うが、それを阻む事情があったのかもしれない。

 ▼福祉の現場で働いていた人に聞くと、こうした患者を抱える家族の悩みは千差万別。近隣の人たちに迷惑をかけたくないという家族の感情もあって、訪問さえ断られるケースもあるという。切ない話である。 (石)


更新)