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「消滅遺産」

 米国の出版社、ナショナル・ジオグラフィックが出した『消滅遺産』の写真集を見た。二度と見られない世界の偉大な建造物の、ありし日の姿と現状の特集だ。

 ▼例えば、アフガニスタンのバーミヤン大仏像2体。1500年も前に造られた55メートルと38メートルの世界最大の立像だったが、今世紀の初めにイスラム過激派タリバンが破壊した。偶像崇拝禁止が理由だった。

 ▼その場面はテレビで放送され、世界中に衝撃を与えた。そこは東西交易の要路で『西遊記』の基になった『大唐西域記』の玄奘(げんじょう)三蔵法師も訪れている。

 ▼南米チリのアタカマには、全長86メートルの巨人の絵が「砂漠の巨大地上絵」として石で描かれていた。15、16世紀のインカ文明期の作らしい。しかし近年、ラリーで数百台の車が走り回り、修復不能のダメージを与えたそうだ。遺産の保存は困難だが、愚行による破壊は瞬間だ。

 ▼ハイチの見事な大統領宮殿は近年、カリブ海大地震で崩落した。本書にはないが、天災に弱い日本では熊本城の例もあった。第二次大戦、ベトナム戦争、今も続くシリアの内戦などが世界的遺産に刻んだ爪痕は目を覆うばかりだ。

 ▼木の文化の日本では戦争が致命的。京都や奈良が米軍の空襲から除外されたのは、本当に幸運だったと改めて思う。

 ▼日本には法隆寺の修復、伊勢神宮の式年遷宮など、独特の知恵で遺産の永続化を図る技術や文化がある。それを大切にしたい。 (倫)


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