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「万引き家族」

 昨日の本欄では子どもを虐待し、泣かせる社会のことを書いた。今日は人と人とが抱きしめ合う社会について、先週から公開されている映画「万引き家族」(是枝裕和監督)を例に考えてみたい。

 ▼主人公は都心の狭くて古い平屋に住む6人の家族。血縁関係はないが、事情があって一つの家に暮らしている。母と長女はパートや風俗関係の仕事に就いているが、家計は祖母の年金と万引が頼りという暮らしである。

 ▼見た目には悲惨な境遇だが、なぜか親しみがあり、ほのぼのした雰囲気が漂う。小魚が群れをつくって身を守るような場面が次々と描かれ、それが観客の心に刻みつけられるからだ。

 ▼とりわけ、家族に虐待されて家に帰れなくなった幼子がこの家に引き取られ、祖母に抱きしめられて思わず表情をゆるめる場面や「妹には万引させるなよ」とさりげなく兄に注意する雑貨屋のじいさんの一言などが秀逸だ。

 ▼この社会の片隅で暮らす貧しい人々が互いに抱き合い、声を掛け合うことでつながっている姿。それを押し付けがましくなく描いたこの映画にいま、多くの人が詰め掛けている。人と人とのつながりの大切さ、抱き合い、声を掛け合うことの喜びを感じる人が多いということだろう。

 ▼人の砂漠のような社会の片隅から「生きること、幸せということ」の意味を問い掛けたこの作品に、カンヌ映画祭で最高賞パルムドール賞が与えられた。なるほど、と思えた。 (石)


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