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「休耕田のメダカ」

 串本町の紀伊大島には、林に囲まれて幹線道路からは見えないキンカン畑や水田がけっこう多い。十数年前、そんな所にあった休耕田を知人から紹介された▼そこは湿田で水路からも水が入り、年中水を張った状態が保たれているとのことだった。そのせいか、近年は珍しくなったミズオオバコが群生し、白や淡い紅紫色の小さな花が数多く咲いていた。田んぼでは黒くて大きなメダカも繁殖していた。「大島の固有種ってあるのだろうか」と、知人が夢のような話をしながら興味深げに見守っていた▼その知人と久しぶりに会ったので聞いてみたら、メダカもミズオオバコもなくなったという。水路が壊れ、湿田が干上がったからだ。メダカは少しずつ減っていたので、誰かが持ち出した可能性が高いという▼メダカが環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されてから十数年になる。水路で泳いでいるのを当たり前のように見てきた世代からすると、指定対象になること自体が意外だが、水環境の変化や外来魚種の捕食などが原因で全国的に激減している▼一方で保護活動も活発だが「何万年もかけて形成された地域ごとの遺伝的多様性が失われてしまう」(環境省)として他地域で捕獲された個体の再放流は問題視されている▼生き物は見えない所でつながり、生態系をつくっている。知人から休耕田のその後を聞かされ、多くのことを考えさせられた。(沖)


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