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「小笠原クルーズ」

 クルーズ船で小笠原へ行った。米国から返還されて50年。近年、世界遺産にも登録されている▼父島は東京から南へ約千キロ。さぞ暑かろう、と心配していたが、猛暑の本土に比べるとずっと涼しい。それにコバルト・ブルーの海の見事さ。南紀や沖縄の海よりも透明度ははるかに高い▼中桐雅夫に「ネコの体のような柔らかさの下に、稲妻の鋭さを隠している海」という詩がある。それを思わせるような海にはアオウミガメがすみ、イルカや大型バスほどの大きさのマッコウクジラが遊ぶ。日本でのホエールウオッチング発祥の地という▼一方、山には独自に進化した植物や虫類が多い。主な土着の花は熱帯の極彩色とは違って白が中心だ。島が隔絶しているので「虫の気を引く競争の必要がないから、手軽な白で済ませている」という進化上の説明が面白い。こうした自然環境の特殊性で世界遺産になった▼三十余の島からなるが、人は主に父島、母島に住む。最近は人口も増え、平均年齢は39歳。本土から若者の移住も多く、出生率も高いという。だが空路はなく、丸1日かかる連絡船が週に1便程度だ▼「船以外で来島したければ、特別機が使える大臣か都知事になれ」と島の人はいう。「それができない庶民は、地殻変動で1年に3センチだけ本土に近づくのを、じっと待つしかない」そうだ▼時間がゆっくり流れる小笠原ならではのユーモアだ。大いに気に入った。(倫)


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