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「災害への備え」

 先週金曜日の地震に驚かれた読者は少なくないだろう。震度4、震源地は紀伊水道というから、思わず身構えた人も多かったのではないか▼『天災と日本人』(角川ソフィア文庫)という文庫本がある。地球物理学者であり、夏目漱石に師事した寺田寅彦が1934年の室戸台風の前後に発表した随筆から、宗教学者の山折哲雄さんが選んだ随筆集である▼読みやすい文章だが、内容は重い。冒頭の「天災と国防」から末尾の「日本人の自然観」まで、一貫した「文明が進めば進むほど、天然の暴威による災害はその激烈の度を増す」という主張が現代社会への鋭い警告となっている▼この数千年来の災禍の経験は、防災の知恵を養成するのに役立った、自然に順応するための経験的な知識を蓄積することで日本の科学は生まれたと説き、にもかかわらず、人々はその警告を無視し、災害への備えを軽視していると警鐘を鳴らす▼最近の本紙に老人福祉施設や学校で「水害避難計画を策定しているのは18%にとどまっている」という記事があった。福島の原発事故では、現場から巨大津波の襲来を予想するデータが上がっていたのに、強制起訴された東京電力の旧経営トップはそれを軽視し「原子力・立地本部が適切にやってくれると思っていた」と公判で発言した▼過去から学び、未来への道標とするのは人類の知恵である。その知恵に、もっと敬意を払うべきではないか。 (石)


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