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「佐山さんに文化功労賞」

 田辺市に住むノンフィクション作家、佐山和夫さんに初めてお会いしたのは1997年夏。高校野球和歌山大会開催中の紀三井寺球場だった▼それがきっかけで翌春、朝日新聞の小冊子に原稿を依頼、球児に贈る言葉を寄せてもらった。そこにこんな言葉があった。「もうそろそろ負けは失敗、の狭量から脱してもいいのではないか。負けることは決して失うことではない」「思った通りの力を出せた者、友との信頼を深めた者、自らの可能性に目覚めた者……すべて勝者ではないか」▼スポーツにはさまざまな勝利がある、という言葉が胸に響いた。後に僕が日本高校野球連盟の理事を務めたときも、いまスポーツ関係のコラムを書いているときも、ずっと忘れたことがない▼その佐山さんに県が文化功労賞を授与する。84年『史上最高の投手はだれか』で潮ノンフィクション賞、93年『野球とクジラ』でミズノスポーツライター賞、95年には日本人で初めてアメリカの「ジョセフ・アストマン賞」を受賞。ノンフィクション界に大きな足跡を残した作家への、地元からの贈り物だ▼氏は82歳。いまも現場を訪れて資料や証人を探し出し、そこに光を当てる能力は健在だ。近年もマラソン界の草分け、金栗四三に関する資料や証言、近代五輪の創設者、クーベルタンの仕事を発掘し、作品に仕上げている▼それを支える少年のような好奇心とフットワークの軽さが頼もしい。(石)


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