AGARAKiiLifeみかんKiiSearch

「名将と教育者」

 名将という言葉はいま、優れた武将というよりも、優れた指導者という意味で使われることが多い。この27年、関西学院大学アメリカンフットボール部の監督を務め、その間、11回もチームを大学日本一の座に就かせた鳥内秀晃さん(60)もその一人だろう▼製麺業に従事するかたわら、昼すぎには必ずグラウンドに顔を出し、約200人の部員の動きに目を光らせる。練習ビデオも細かくチェックし、問題点は即座に注意する。シーズン前には全部員と個別面談。「どんな人間になるのか」「どうチームに貢献するのか」と問い掛ける。監督である前に、課外活動を通じて学生を育てる教育者である▼その資質は大学を卒業して3年間、本場アメリカの名門チームでコーチングを学ぶ中で育まれた。監督として実績を積んでいた40歳の時には、一念発起して高校の教員免許も取得した▼教育実習中に見た光景が忘れられないという。現職教員が黒板に目を向け、生徒には少しも目を向けていなかったのだ。以来、より学生との対話を心掛けている。授業でも「最前列に座り、先生の目を見て聞きなさい」「そうすれば、必ず理解できる」と指導している▼日本のスポーツ界ではいまも、指導という名の暴力やパワハラが後を絶たない。そういう世界に背を向け、部員の自発性に期待して育てる教育者だった。11日、2019年限りでの引退が公表されたが、残念でならない。(石)


更新)