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生誕150周年 熊楠を知り、熊楠に学ぼう

 18日は博物学者、南方熊楠(1867〜1941)の誕生日。生誕150年とあって、記念行事が各地で催される。田辺市だけでも7月に短歌や俳句の大会、8月に変形菌の国際大会、10月には150周年記念式典がある。

 これを機に訪れてほしい場所はたくさんある。田辺市中屋敷町の南方熊楠顕彰館や白浜町臨海の南方熊楠記念館(本館)と先日完成した新館。本紙に連載中の「ゆかりの地を訪ねて」で紹介するポイントもお薦めだ。

 田辺市稲成町の高山寺住職で南方熊楠顕彰館の館長でもある曽我部大剛さん(58)は「熊楠の研究分野は多岐にわたるが、そのすべてに共通点がある。異質なものが混ざり合う境界。そこで活性化する何かに、彼はわくわく感を持ち続けた」と解説する。

 実際、熊楠の研究領域は博物学や民俗学、植物学、生態学など広範囲におよび、それぞれに多くの論文を残した。粘菌類では世界でも有数の研究者である。

 熊楠の知的探究は、少年期の膨大な読書と筆写から始まった。江戸時代の百科事典「和漢三才図会」を友人宅で暗記。家に戻って、その記憶をたどりながら筆写したという逸話は有名だ。

 ここから学びたいのは「読むこと」「書くこと」への姿勢である。読んでおしまいではなく、ノートに要点を書き込み、記憶を記録にとどめ、それをさらなる好奇心、探究心に広げた。

 いまはインターネットで欲しい情報が簡単に手に入る。一方で読書離れが進み、文章を書く機会も減っている。それが考える力や表現力を劣化させているのではないか。子どもたちに、もっと読み書きの時間を与えたい。

 二つ目は、自然保護の視点である。熊楠は政府が進めた神社合祀(ごうし)に反対し、多くの貴重な森を伐採の危機から救った。それらがいま、地域の宝となった。

 2004年、世界遺産に登録された「野中の一方杉」で有名な田辺市中辺路町の継桜王子跡。1935年に国の天然記念物に指定され、2015年9月に国立公園となった田辺湾の神島。熊楠が先頭に立って守った13カ所は、同じ年に「南方曼陀羅(まんだら)の風景地」として、国の名勝に指定された。

 熊楠は1916年、「田辺繁栄の道筋」を示す、こんな文章を牟婁新報に寄稿している。「風景ばかりは田辺が第一。田辺人は風景を利用して土地の繁栄を工夫するがよい。交通が便利になってみよ、必ず風景と空気が第一等の金儲けの種になる」。

 今、熊楠が守った地に海外からも多くの客が訪れ、地域経済を支えている。彼の先見性とそれがもたらした恩恵は計り知れない。

 そしてもう一つ。異質なものに対する姿勢を学びたい。万物が複雑に絡み合って成立する「南方マンダラ」は、すべての事象はつながっていると語り掛ける。異質な考えを排除する風潮が強い現代こそ必要な視点であろう。 (N)



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