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田辺祭の光と影 今が知恵を出す好機

 昨年、世界遺産に追加登録された田辺市・闘鶏神社の例大祭「田辺祭」が24、25日に営まれる。

 紀州三大祭りの一つであり、400年以上の歴史を重ねる祭りである。8地区が繰り出す笠鉾(かさほこ)や衣笠(きぬがさ)の巡行、稚児が主役となる流鏑馬(やぶさめ)などに加え、24日夜、笠鉾と衣笠が旧会津橋の上で引きそろい、提灯の明かりが会津川の川面に映る場面は幻想的だ。

 今年は旧会津橋以外に、25日夜にも、闘鶏神社前の宮路通りで笠鉾と衣笠を引きそろえる。世界遺産の登録を受けた新たな試みである。この祭りを全国に売り出す好機にしたい。

 一方で、祭りの主役を務める地区では年々、担い手と運営費の確保が困難になっている。ある地区では「少子高齢化で住民が少なくなり、人材集めが難しい」、別の地区では「費用のほとんどを地区で負担しており、運営が大変」などの声が聞かれる。

 その対策として、笠鉾の引き手を地域外から募ったり、祭りに興味を持った大学生や外国人の手を借りたりする地区もある。

 運営費に関しては、笠鉾や衣笠を出す地区と田辺商工会議所などでつくる「田辺笠鉾協賛会」が、市の補助金や集めた協賛金を各地区に配分。市も本年度、協賛会に約400万円の補助金を出した。引きそろえを増やした分の費用として、例年の額に約150万円を追加したのだ。世界遺産登録を機に、祭りを観光イベントとして盛り上げる費用であり、来年度以降も続ける予定という。

 しかし、市を代表する観光イベントというには、少々物足りない。弁慶まつりに646万円、イルカふれあい事業に150万円という補助金の額を並べると、田辺祭だけを特別扱いできないということだろうが、この祭りを全国に売り出すというのなら、もう一工夫あってもよいのではないか。

 その中で保存や継承に向けた新しい動きもある。市は本年度から6年かけて祭りを映像に記録し、お囃子(はやし)を録音する。神社や田辺祭保存会などと実行委員会をつくり、本年度は文化庁からの補助を受けて進める。将来的に、祭りを国指定の文化財にすることを目指す。これによって、口伝や写真が中心だった保存の試みを広げてほしい。

 近年、県内を訪れる観光客は増えている。田辺市でも熊野古道を中心に観光客が増え、とりわけ外国からの客が多くなった。

 そうした動きを背景に、伝統の田辺祭を市を代表する観光資源としても、大いに盛り上げていきたい。市と担い手の地区が協力し、来場者を増やすことを考えるのである。(1)観光客が祭りに参加できる観光ツアーを企画する(2)有料の観覧席を設ける(3)地区ごとに衣装を整え、担い手に有料で貸与する――そんな工夫をすれば、運営費集めにもつながるのではないか。

 世界遺産への登録は、田辺祭の保存や継承について、官と民が知恵を出す好機でもある。 (F)


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