AGARAKiiLifeみかんKiiSearch

追加登録1年 世界遺産生かす工夫を

 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に、田辺市の闘鶏神社など22カ所が追加登録されて1年。観光客は増加したが、それを生かす取り組みや遺産の保全に関しては課題も多い。

 田辺市では、中辺路と大辺路の分岐点で田辺のまちなかにある闘鶏神社をはじめ、北郡越、長尾坂、潮見峠越、赤木越が追加登録された。これにより熊野詣での玄関口と紀南の各地に延びる参詣道や目的地の一つである熊野本宮大社が世界遺産でつながった。

 追加登録の影響は、即座に現れた。昨年11月〜今年3月に闘鶏神社を訪れた観光バスは、月100台前後。4月以降は月50台前後になったものの、秋の行楽シーズンに入り、再び増えている。登録以前は月に10台程度。バス1台の乗客は30〜40人だから、月に千人以上来訪者が増えている計算だ。

 しかし、それが市街地の活性化には結び付いていない。闘鶏神社によると、観光バスは神職の説明を受けて参拝した後、すぐ次の目的地にバスで移動する。まちなかを回遊しないから、土産の購入や食事もしないという。

 こうした現状に「闘鶏神社が世界遺産になってもあかん」という声が聞こえてくる。しかし、訪れる人は増えている。それをどう生かすか。参拝者の回遊経路を含め、商店街に足を伸ばしてもらうための仕掛けを工夫したい。

 その一つとして、市は闘鶏神社正面近くに休憩所「ポケットパーク」の整備を進めている。観光案内所や休憩室、トイレを設置し、田辺観光ボランティアガイドが常駐する計画だが、その完成予定は来年3月。出遅れ感は否めない。

 急増している外国人観光客も、経済効果につなげられていない。商店街には加盟15店の免税手続きが1カ所でできるカウンターを設置しているが、本年度の利用は15日までに2件しかない。

 これにも「外国人は買い物をしないから、あかん」という声がある。本当にそうだろうか。外国人は長期の休暇をとって遠く熊野の地を訪れている。その人たちがどんなサービスを求めているか。その需要を把握し、それに応じた戦略を立てずに「あかん」というのは怠慢ではないか。

 実際に田辺市熊野ツーリズムビューローが今年8月、JR紀伊田辺駅前に開設した新店舗は、宿泊予約なしで訪問する外国人客への対応や荷物搬送サービスの取り次ぎが好評で、多くの利用がある。

 世界遺産を生かしたまちづくりを考えると、観光は重要な要素である。たとえ人口が減少しても、観光客が熊野古道を歩くことで参詣道は生きてくる。住民と観光客の交流は、まちににぎわいを呼ぶ効果が期待できる。

 そう考えると、今後は「紀伊山地の霊場と参詣道」を構成する自然、歴史、文化を日々の生活の中で、守り、受け継ぐことがより重要になる。住民と行政が互いに協力し、助け合って、世界遺産を生かしたまちづくりを進めようではないか。 (K)



更新)