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職員2人の着服事件 「民、信なければ立たず」

 田辺市政への信頼が損なわれる事態がまたも発覚した。市の元職員2人が在職中、延べ329世帯分の生活保護費計約2756万円を着服していたのだ。

 市の調べでは、着服していたのは、福祉課でケースワーカーをしていた元女性主査(46)=懲戒免職=と2015年6月に死亡した同課の元男性係長(死亡時46)。

 元主査は11〜14年度に、延べ160世帯分の約1480万円を着服していた。手口はさまざまで、例えば受給者には「滞納している家賃を支払うため」と説明し、生活保護費から家賃に上乗せした金額を天引きし、着服していた。

 元係長は08〜14年度に、受給者から預かり、市に戻すべき金を抜き取るなどして、延べ169世帯分の約1275万円を着服していた。係長当時には、市の金庫に戻すべき生活保護の過支給分を、事務手続きを担当している立場を悪用して金庫から抜き取っていた。

 驚くのは、元主査がケースワーカーに就いた初年度から400万円以上を着服していること。新人でも悪用できるシステムが放置されていた証拠である。

 しかも、元主査と元係長の不正時期は、共謀した形跡がないのに4年間にわたって重なっている。同じ課内で互いに知らぬまま別々の手口を使い、生活保護制度を悪用して私腹を肥やしていたのだ。

 これが見過ごされていた。どういうことだろう。第一義的に罪を問われるは犯罪を犯した職員2人だが、そうした不正を許し、自浄作用が働かなかった市の責任はもっと重いのではないか。

 不正調査の端緒は14年5月。元主査が生活保護費を不適正に処理している事案が見つかり、市の内部調査が始まったが、なぜかそれが徹底できず、不正の全容を見破れなかった。にもかかわらず懲戒処分を発表した15年1月の会見では「私的流用はなかった」と言い切っている。

 ところが、仕事を引き継いだ複数の職員が元主査の継続的な不正に気付いた。慌てた市は15年5月から庁内にプロジェクトチームを設け、生活保護費の事務処理全件について調査した。それによって着服金額は膨れ上がり、当初は調査する側だった元係長の不正までが明るみに出た。

 真砂充敏市長は「市民の信頼回復に全力で取り組む」とのコメントを発表した。だが、それで市政への信頼が回復するとは思えない。今回の不祥事に対する対応は遅れが目立ったし、過去にも森づくり事業を巡る補助金の不正受給問題などチェック機能や公平性を問われる事案が起こっているからだ。

 なぜ、公務員が不正行為に走るのか。信賞必罰の欠けた人事システムや職場環境に問題はないのか。これを機に、徹底的に問題点を洗い出し、身を切る覚悟で改革に取り組むべきだ。

 「民、信なければ立たず」という。信頼が失われたら行政は成り立たない。この言葉を市長以下、職員全員が胸に刻み、市政を再生しなければならない。 (K)



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