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田辺・みなべの地質遺産 地域の宝を記録しよう

 「地質遺産の物語」田辺・みなべ編が完結した。1年で50カ所。田辺ジオパーク研究会の協力で、全国的に貴重な地質や景観、動植物の生息地を巡った。

 前回の連載「南紀熊野ジオパーク」(107回)は日本ジオパークに認定された場所ばかりで、田辺市分は含まれていない。その物足りなさから始めた連載だった。

 地元の人や専門家の協力で巡った50カ所には、数千万年前の地球の激しい営みによってつくり出された多様な地形が凝縮されており、温泉や信仰の対象となった岩や滝も含まれていた。

 大昔、九州南部のカルデラが噴火し、その時に降り積もった火山灰が露出している場所が紀南にもある。連載中に起きた本白根山の噴火とともに、日本が火山国であることを改めて知らされた。

 稲成町のひき岩群は、地殻変動や浸食によってできたユニークな形の岩が連なる。眺望が良く、ハイキングコースとしても人気が高い。近隣には岩屋観音や田川の押し分け岩、大坊の大天井岩など、魅力的な場所が多かった。

 みなべ町では「こうもり岩」と呼ばれる巨岩群を訪ねた。岩の間に空間が広がり、キクガシラコウモリの群れが出迎えてくれた。

 半面、田辺市神子浜2丁目から文里1丁目にかけては宅地化が進み、ごく一部にしか岩山は残っていない。半世紀前までは江戸時代から続いた天然砥石(といし)の産地だったが、その面影もない。

 連載を読んで連絡してくれた読者もいた。上秋津愛郷会の元役員(77)もその一人だ。「奇絶峡の風穴」である。「先輩から教えられて三十数年前に入った。なんとか存在を後世に伝えたいと気になっていた」と訴えられた。一緒に山へ分け入り、古い記憶を頼りに何とか探し当てることができた。記事を1面に掲載すると「これで一安心」と感謝された。強い郷土愛を感じた一例である。

 地質遺産を知ることは、地域の歴史や文化を振り返り、先人の営みに学ぶこと。観光資源に活用できる可能性もある。しかし、南紀熊野ジオパークと比べると、観光地化されていない所が多く、手つかずの場所が多かった。

 取材中にも、リストに挙げたが下調べの段階で断念した所が少なくない。関係者に話を聞き、取材を進めても、すんなりいかないこともたびたびだった。現場にたどり着けず、写真を撮影するにも一日がかりという所もあった。

 地質遺産は地域の宝である。半面、人が住まなくなった途端、忘れ去られてしまう危うさもある。すでに消えた所もあるかもしれない。だからこそ、残っているものを掘り起こし、記していく作業が大きな意味を持ってくる。近く発行される田辺ジオ研の冊子「おもしろ大地田辺」や今回の連載もその一つと考える。

 いま一度、自分たちが生活する地域の地質遺産を検証しよう。それを通して先人の営みに触れ、大地と共存する手掛かりを考えようではないか。(Y)

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