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最多になった虐待相談 子の笑顔、社会で守ろう

 東京都目黒区で今年3月、両親から虐待された5歳の女児が短い命を閉じた。「もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします」。残されたノートにはこのように両親に許しを請う、女児の悲痛な思いがひらがなでつづられていた。彼女は毎日、どのような思いで生きていたのだろうか。このようなことは二度とあってはならない。

 県はこのほど、昨年度に県の児童相談所(中央児童相談所・紀南児童相談所)に寄せられた児童虐待相談件数が1142件、過去最多となったと公表した。毎年のように増えており、10年前の427件と比べ、2倍以上になる。

 全体の半数近くを占めたのが子どもの前で家族らに暴力をふるう「面前DV」や言葉による脅しなどの「心理的虐待」。殴る蹴るなど「身体的虐待」と、育児を放置する「ネグレクト」がそれぞれ3割近くあり、「性的虐待」もあった。

 市町村に寄せられた相談件数も1314件と過去最多。一部は県の児童相談所への相談件数と重複しているが、単純に合わせると年間で2500件近くに上る。相談件数の多さには驚くが、同時にこれが隠れていた部分の表面化の表れだとすれば、子どもを守る問題意識が向上し、より多くの事案の早期発見につながっている可能性もある。

 子どもが家庭で頼れるのは家族だけだ。しかし虐待は、家庭という密室で発生することが多く、目立った外傷などがなければ外部からは気付きにくい。価値観が十分に定まっていない幼い子の場合、自分が受けている仕打ちがしつけか虐待かどうかの判断も付かない可能性もある。

 けれども、虐待は子どもの成長や人格形成に悪影響を及ぼす可能性がある。

 だからこそ、周囲の目が求められる。少しでも子どもやその家庭の異変に気付けば、即座に手を差し伸べたい。日本の法律は、虐待を受けたと思われる児童を発見した人に対し、児童相談所などへの通告義務を定め、学校の教職員や医師にも早期発見の努力を求めている。

 子どもたちへの虐待を生まない環境づくりも求められる。原因の一つに挙げられるのが育児の悩みによるストレス。核家族化が進行し、地域のつながりが希薄化する中で、多くの親がこのストレスを抱え込んでいるという。

 県はこの問題に対処するため、妊娠期から子育て期まで一元的に相談を受ける「子育て世代包括支援センター」を来年度までに全市町村に設置することを目指している。そこを拠点に、安心して相談できる態勢をつくってほしい。

 育児を巡るストレスだけではなく、虐待の原因は多岐にわたる。近年、小中学校にはびこるいじめの問題もその延長上にある。だからこそ公的機関や地域を挙げて永続的に向き合う必要がある。子どもたちの笑顔を守ることは大人の責務である。 (K)


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