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語り継ごう戦争体験 不戦の誓い、未来につなぐ

 15日は73回目の終戦記念日。改めて戦没者を追悼し、平和を祈念したい。

 戦争の悲惨さ、平和の大切さを後世に伝えようと、紀伊民報は毎夏、戦争体験を聞く連載「語り継ぐ記憶」を続けている。14年目の今夏に登場した5人は全員90代。いずれも従軍体験者だ。取材を通して、その苛酷な体験を後世に伝えることへの体験者ならではの使命感を垣間見た。

 射撃の腕を買われて近衛師団に配属された田辺市上芳養の武森茂一さん(97)は、激戦地での撃ち合いの様子を語った。それを紙面化されることにためらいながらも、赤裸々に思いの丈を語った。「戦争は殺し合い。人のすることではない」と不戦を誓う。

 田辺市中万呂の山本章さん(96)は、フィリピン・ミンダナオ島での従軍体験を語った。ジャングルでの戦闘、飢え、病、死線を行き来した体験談を、地獄絵図を見せられるように聞いた。

 通信兵だった田辺市東山2丁目の羽山茂さん(90)の体験もすさまじい。南洋で乗艦が魚雷の直撃を受け、サメに襲われる恐怖のなか大海原を2、3時間漂った。別の乗艦では、戦闘機の機銃掃射を受け、多くの戦友が目の前で亡くなった。

 戦後2年間、シベリアで抑留生活を送った田辺市龍神村福井の岡本昇さん(95)は「いま、世界できな臭い動きが起こっている」と不安感を募らせ、戦争をしてはならないと訴え続けたいという。

 彼らはみな、70年以上前の戦争体験を昨日のことのように覚えている。よほど強烈で非人道的な体験だったのだろう。

 こうした従軍体験者の思いをよそに、この国にはいま、きな臭い匂いが漂っている。

 例えば防衛費。防衛省は来年度の防衛予算の概算要求として、過去最大の5兆3千億円近くを計上する方針だ。実現すれば、来年度で7年連続の増加となる。こうした状態をどう捉えればよいのか。

 例えば核兵器廃絶に対する政府の姿勢。昨年7月、国連で核禁止条約が122カ国・地域の賛成で採択された。条約は50カ国・地域が批准してから90日後に発効されるが、今年7月時点で批准は11カ国・地域にとどまる。にもかかわらず、唯一の被爆国である日本政府は否定的な立場を取っている。安倍首相は「(核保有国と非保有国)双方の橋渡しに努める」と発言しているが、その具体的な動きは見えてこない。

 世界で唯一の戦争による「被爆国」としての教訓はどこに行ったのか。恒久平和を願う憲法の精神はどこにあるのか。被爆者をはじめ多くの市民から批判されるのも当然だろう。

 政治が時に判断を誤ることは、過去の歴史をみれば明らかだ。そしてその軌道を修正できるのは、主権者である私たちだ。

 戦没者に思いをはせ、歴史から学ばなければならない。戦争の記憶を風化させず、平和をつなげよう。それが私たちの使命だ。(N)


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