AGARAKiiLifeみかんKiiSearch

熊野灘の捕鯨文化が日本遺産に

 文化庁は25日、日本文化や伝統を語る上で必要な地域の文化財や伝承、風習などの物語を認定する「日本遺産」に、和歌山県太地町など4市町の熊野灘を対象地域にした「鯨とともに生きる」を選んだと発表した。これを受け、県や関係市町、団体などが協議会を設置し、観光客誘致に向けた取り組みを推進する。

 「日本遺産」は、地域の歴史的魅力や特色を通じて、日本の文化や伝統の物語を認定する制度で、文化庁が昨年度に始めた。物語に不可欠な文化財を整備し、発信することで、観光面などでの活性化を目指す。

 有識者で設置する、文化庁の審査委員会が興味深さや斬新さ、日本遺産を生かした地域づくりの将来ビジョンがあるかなど5項目を総合的に判断して選び、文化庁が決定した。今回は全国から67件の申請があり、19件を選んだ。

 県は串本町、太地町、那智勝浦町、新宮市を対象地域にした「鯨とともに生きる」と、和歌山市と海南市を対象地域にした「御三家紀州徳川家の『父母状』を継承する街」を申請。「御三家」は認定されなかった。

 「鯨とともに生きる」は、鯨船が登場する河内祭の御舟行事(串本町)、古座鯨方の拠点だった潮岬の鯨山見(同)、太地のくじら踊(太地町)、鯨供養碑(同)、三輪崎の鯨踊(新宮市)など19の文化財を基に、熊野灘で古式捕鯨が産業として定着発展した背景と、受け継がれた捕鯨文化を示す物語。具体的には、クジラは日本人の信仰対象で、いまも祭りや伝統芸能、食文化などが受け継がれていることなどの内容。

 認定を受け、県、県観光連盟、関係4市町、市町の観光協会、三輪崎郷土芸能保存会、古座川河内祭保存会などが5月に協議会を設置する予定。協議会は国に「日本遺産魅力発信推進事業」の補助金を要望し、案内板の整備や「日本遺産ガイド」の養成、ガイド本やサイト作成など、観光客増に向けた取り組みを進めたいという。

 仁坂吉伸知事は26日の定例記者会見で、対象地域の周遊旅行を企画したい考えを示した。その上で、太地町などで続く反捕鯨活動に対しては「鯨を殺すな、食べるなという人たちでも、祖先は捕鯨文化の下にいる。思想は自由だが、われわれがこういう文化を持って懸命に生きてきたことに対する尊敬の念はあってしかるべきだ。彼らの文化レベルが高ければ、古式捕鯨文化が脈々と息づいてきた日本遺産の意義は分かってもらえるはずだ」と話した。

 文化庁は初年度、18件を認定しており、計37件となった。県内からは「鯨とともに生きる」が初の認定となる。

■捕鯨への理解進めば 認定喜ぶ関係者

 古式捕鯨発祥の地である太地町や串本町では「(捕鯨に対する)外国人の理解が深まれば」などと認定を喜んだ。

 太地町漁協の貝良文参事(56)は「認定は大変ありがたい。認定された内容の通りで、自分たちは昔から鯨に感謝をしながら『いただきます』の精神で生きてきた。そのことを日本遺産という形で認めていただき、日本だけでなく、世界にも広がっていけばうれしい」。太地町の三軒一高町長(68)も「町が目指している『鯨の学術研究都市』をつくる上で大変意義のあることだと思う。この地域の人たちが、生きるために必死に続けてきた歴史や文化への理解が外国でも進むことを期待したい」と話した。

 串本町の田嶋勝正町長(57)は「継承されてきた文化がこうして日本遺産に登録され、認められたことは大変うれしい。今後はより一層、多くの人に知ってもらえる方策を考えていきたい」と抱負を述べた。


【日本遺産に認定された「鯨とともに生きる」の構成文化財の一つ「三輪崎の鯨踊」(上)と「河内祭の御舟行事」=写真は和歌山県の新宮市や串本町の提供】

更新)


ロード中 関連記事を取得中...