AGARAKiiLifeみかんKiiSearch

英語版代表作の表紙に円月島 ノーベル賞作家のイシグロ氏

 10月にノーベル文学賞を受賞した日系イギリス人の小説家、カズオ・イシグロ氏の作品「日の名残り」の英語版の表紙絵に和歌山県白浜町の円月島の版画が使われている。オーストラリアでこの本を入手した同町出身の鈴木清策さん(55)は「購入した後、版画の中の車と私との間にも不思議な縁があるかもしれないことが分かった」と驚いている。

 この版画は版画家・前田藤四郎(1904〜90)の作品「白浜・円月島」で、1940年に発表された。白浜町の観光のシンボル円月島を暖色系の色を使って表現している。

 イシグロ氏は5歳だった60年に家族でイギリスに移住した。「日の名残り」はイシグロ氏の代表作の一つ。衰退するイギリス貴族を執事の目を通して描いている。内容と表紙絵は関連がないとみられる。

 初版は89年に出版された。表紙絵は、大英博物館所蔵の版画を撮影して使ったと本に記している。

 鈴木さんは白浜温泉街で生まれ育った。現在はオーストラリア・メルボルンに住み、モナッシュ大学で教授を務めている。「17年ほど前、懐かしい古里の景色が表紙になった本をシドニーの書店で偶然見つけた。見たことがなかった版画だったので、本の内容を確かめることもなく買った」という。

 2006年にメルボルンを訪れた鈴木さんの父、故・清太郎さんも、この版画は見たことがなく、2人で話が弾んだ。清太郎さんは各地の美術館に問い合わせ、1年もたたないうちに版画を探し出し、購入した。

 清太郎さんが版画について調べるのを手伝った人によると、版画は100枚刷られていたこと、和歌山県内で海洋学者の会合があり、渡英前のイシグロ氏も海洋学者の父親に連れられて白浜に来たことを美術館の学芸員を通じて知ったという。

 版画に描かれていた車が、鈴木さんの祖母の実家が白浜温泉で経営していたタクシー会社の車の可能性があることも分かった。当時実家ではフォード、シボレー、ポンティアックを所有しており、版画の車はフォードとみられる。


更新)