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(8)夜

 リュ・サンバンサン。シャンソンにも歌われる、通りの名。

 老舗シャンソニエ(シャンソン小劇場)「ラパン・アジル」からは夜ごと懐かしの歌声が通りに漏れ、小さなぶどう畑ではパリ産のワインが作られている。畑の向い、「ラパン・アジル」の、その隣に私はいま住んでいる。

 本来ここはエアー・フランスに勤める日本人の部屋だ。彼女が長期休暇をとりインドに住む間、私がこの部屋で彼女の猫と暮らすことになった。

 インドに旅立つ前、しばしの不思議な共同生活。荷造りや絵に、それぞれが没頭し、夜になると「何か食べる?」と食事にする。

 彼女が作る本格インド料理は、どこか日本の家庭料理を思い出させる味。世界の空をひと月に何度も行き来して、彼女は生きている。

 日々自分を更新するように、ニュートラルなものの見方で、日本をフランスを、世界をとらえながら。さまざまを語る食卓は、私にとって貴重なひと時となった。オレンジ色の街灯がこうこうとともる、モンマルトルの夜の片隅で。=隔週掲載



【パリ唯一のぶどう畑。部屋の窓からの風景(油絵)】

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