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(9)ディナン

 階下に住むフランス人の大家さんから、ある提案。

 「ブルターニュ地方のディナンという町が、画家を対象にアトリエ使用権を公募している。もし選ばれれば2カ月そこに住み、絵を描くことができる。試してみるかい?」応募締め切りは10日後。

 そこから猛スピードで書類作りが始まった。履歴書・志望の動機書・作品ファイル作り。フランス語で書くことに頭を抱える前に、まず説得力ある原文を考えなくてはならない。

 オルセー美術館に通い、美大卒のフランス人の友人の意見を仰ぎ、高品質のカラーコピー屋を探す。その週末には大家さんたちがディナンまで同行してくれることに。パリから400キロ、高速をひた走り一路ブルターニュへ。

 ディナンは運河を挟む谷に、中世そのままの重厚な町並みが層のようにつづく町。石畳の急な坂道を一歩ずつ上るごと、積み重ねられた歴史が体にしみ込んでくる。

 図書館長に会いコンペの詳細を聞くことができる。夜は町の人たちとともに伝統料理で乾杯。

 結果はともあれ、挑戦してみることで多くの人が力を貸してくれた、そのことがなによりうれしい。月明かりの城壁の坂道をみんなでホテルまで帰る、こんな夜がなによりうれしい。


【中世の町並みを貫く一本の坂道】

更新)