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《2》ベルンの夜

 スイス、ベルン中央駅を出ると外は降りしきる雪だった。通りを行く人にホテルへの道を尋ねる、手にした地図が雪にまみれてゆく。

 たどりついた宿で、体勢を立て直し街へ。冬山登山にでも出掛けそうな格好で、まずは旧市街、15世紀に建てられたという時計塔を目指す。

 噴水の水を拝借し、通りにしゃがみ込んで絵の具を広げる。

 熊の楽隊、おんどり、時の神様、500年を刻む時計仕掛けがにぎやかに正時を告げる度、人々は頭上を仰ぎ、またどこかへ去っていった。

 夜のとばりが、すぐそこまで来ていた。家々のあかりが次第に柔らかな雪ににじんでゆく。

 到着後1枚目の絵がまずまずに仕上がりほっとした途端、体の芯まで冷えきっている事に気付く。

 近くのカフェに飛び込み、たっぷりのカフェ・オレを胃に入れる。だんだん体が溶かされてゆくような感覚に浸りつつ、ぼんやりと窓の外の街並に目をやる。

 こうしてパリから地続きにやって来たスイスだけど、フランスとはテンポがずいぶん違うように思える。悠然、堅実、そんな言葉がよく似合う、つつましいあかりを守るような暮らしがここにはあるようだ。

 いつの間にか雪もやみ、古都ベルンの夜はさえた光に包まれていった。



【ベルンの街はずれ。ゆうげの煙が立ち上りはじめた】

更新)