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《7》タラゴナの祭り

 バルセロナ、サンツ駅より地中海沿いをさらに南へ。外国人向けフリーチケットを利用する一等車の旅は快適。オレンジジュースが振る舞われ野菜入りスクランブルエッグの朝ご飯と続く。

 窓の外に続くのは地中海の砂浜、快晴の青のグラデーション。素朴な卵料理をほおばる、のどかな旅路。

 12時、バレンシア着。そこはオレンジがたわわに実る田園の村ではなく、結構な工業都市だった。途中いくつか通り過ぎた、海沿いの町まで戻ろう。

 再びオレンジとヤシ畑が続く赤土の大地を行く。車窓は出会うはずもない人々の日常を投影し、過ぎていく。この土地に暮らす人の一生がある。そのことに不思議な感動を覚える。

 タラゴナは、駅に降り立った瞬間「ここに留まろう」と思わせる町。

 丘のホテルを訪ねると、最上階の広い部屋に通してくれる。この土地を一人旅する日本人が海沿いの部屋に泊まりたいと言う、それなら空いている中でいい部屋を。スペイン人にはそんなところがある。

 夕暮れ時、紀元前ローマの遺跡の残る街並み。地中海テラスと呼ばれる展望台で一枚絵を描く。

 宵の口、町の中心にある教会の周りは大勢の人出。まるで縁日のよう。すると遠くで鳴り響く太鼓の音。それはお祭りが始まる合図だった。

 十字架のキリスト、マリア様、みこしを担いだ行列が厳かに進み、古典楽器の楽隊が続く。宗教的衣装に身を包み、たいまつ片手に鼓笛に合わせ、一足ずつ足をそろえ厳かに町を練り歩く。

 スペイン巡礼地と姉妹道提携を結んだ熊野の神が今夜この町に導いてくれたのだろうか。私は、遠い故郷の夏祭りを思った。


【夕暮れの遊歩道「地中海テラス」よりコスタ・ドラドを望む】

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