AGARAKiiLifeみかんKiiSearch

《8》再びの、リスボン

 アイスランドの火山が大爆発。その噴煙とともに南下する格好でパリ、ドゴール空港を飛び立ったのは4月の中ごろのことだった。

 海外一人暮らしも8カ月を過ぎ、すっかり旅慣れた風の私は、宿も決めずポルトガルに乗り込んだ。この国を旅するのは2度目のこと。

 前回の短い道中、朝のリスボンを歩きながら「いつかこの町を描こう」と決めた。その直感どおり私はここに戻ってきた。

 再びの異国の風景は不思議な郷愁を誘う。町を見下ろす高台、描きたかった風景を前に絵の具を広げる。

 黒人の若者がフランス語で声を掛けてきた。「主人と子どもたちと待ち合わせなの」そんな大うそもすっかり板に付くようになった、のんきな絵描きの一人旅。

 事態に気付いたのは翌朝のことだった。こぢんまりとした宿の食堂に朝ご飯に下りると泊まり客が食い入るようにテレビを囲んでいる。湧き起こる白煙、戦後最大の噴火はヨーロッパ全土の空をまひさせているらしい。ドゴール空港も当然閉鎖状態。私は1週間後のエアチケットを持っていた。案じても詮ないこと。自分の旅を続けることにする。

 行ってみたい町があった。海辺の町、ナザレ。そこはイワシの網引きが有名な町。ミニスカートの民族衣装をまとった女性が海岸で網を引く姿を見てみたい。

 ナザレに向かうには高速バス以外、手段がないようだ。2、3日中に戻ってくるからと、フロントに荷物を預け私は町外れのバスターミナルに向かった。

 どんよりとした曇り空からは時折激しい雨が降ってきて、一瞬の晴れ間をつくり、また海からの雲を呼び寄せる。洋上の都市リスボンの春は、まだ肌寒い。



【雨のリスボン。にわか雨が絵の上を通り過ぎ、不思議な色のにじみを作った】

更新)