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(385)イルカ輸送

 「うちの水族館にイルカを運んでくれないか」「いいですよ」

 先日、リニューアルオープンして話題になっている高松市の新屋島水族館からの依頼で、太地から雌雄計2頭のバンドウイルカを輸送した。

 「エビとカニの水族館が何でイルカ?」と思われるかもしれないが、わたしと新屋島水族館とは実は30年来の付き合い。高松で移動水族館を開催する際は手伝ってもらうこともあるし、昨年末のオープン準備の際にもさまざまな生物の入手を手伝った経緯がある。また、わたし自身もスナメリやイロワケイルカ、ジュゴンなどの長距離輸送の経験があるので、まあ和歌山からの輸送ならあいつに任せておけばなんとかするだろう…と思われたらしい。

 午前5時。太地漁港内の畜養いけすから取り上げられたイルカを担架に乗せて船で港まで運んだ。クレーンで担架ごとつり上げて輸送用の専用コンテナに収容すると、フォークリフトで待ち構えていた4トンウイング車に積み込んだ。これから屋島までの8時間、獣医師とスタッフが荷台に乗り込んで(もちろん許可は取ってあります)体に皮膚の乾燥を防ぐためのワセリンを塗り込み、体温の上昇を抑えるためにシャワーをかけながら走るというわけだ。

 国道42号から阪和自動車道を経て和歌山市からフェリーで徳島県に渡り、国道11号から高松道というルートをたどった。ようやく屋島水族館に着いたのは午後4時。多くの報道陣の見守る中、直ちにクレーンで再び担架ごとつり上げて、屋島水族館のスタッフが水の中で待ち構えるプールへ降ろされた。長時間同じ姿勢でいたので体のしびれが取れるまでは頭を支えて呼吸を確保してやらなければならない。

 30分後、ようやく2頭とも元気に泳ぎだした。餌止めで空腹だったのか2キロのサバをペロリと平らげた。

 「ご苦労さん。よかったね」。この言葉で疲れはいっぺんに吹き飛んだ。

(すさみ町立エビとカニの水族館長)

写真イルカ輸送の指揮を執る筆者(奥右端)=高松市で

更新)